ミャンマー駐在体験談

ミャンマー政変後の状況を一人の日本人駐在員の視点で書くブログ

市民の行動(CDM)

 2月1日のクーデター発生から、市民のデモは拡大を続け、国軍政府 VS 市民という戦いの構図が出来上がりつつある。2月8日に国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官は、TV放映で、憲法の尊重、新型コロナ対策、新型コロナで低迷した経済の立て直しなどを国民に訴えたが、効果がなく、デモは拡大の一途をたどっている。

 デモでは、”CDM”のプラカードを持った市民がたくさんいる。CDMとは、Civil Disobedience Movementの略で、市民不服従運動という意味だ。運動の内容は、単純に国軍政府の命令に服従しないというのではない。政府機関、医療機関、銀行などの職員が、職場放棄してデモに参加することで、社会に混乱を与え、国軍政府を揺さぶろうとする運動だ。CDMは多くの市民に賛同を得られ、金融機関や政府機関の活動がストップすることで、経済活動が混乱し始めた。

 例えば、ミャンマーの主要銀行であるKBZ, AYA, CBでは、従業員が職場放棄をしているため、店舗を開店できないばかりか、ATMも稼働しておらず、国内送金・国際送金も行えない。また税関や港湾でも、かなり多くの職員や労働者が職場放棄をしているため、通関などの手続きが行えなくなっている。輸入通関は、銀行が機能していないため、関税が払えず、商品や原材料の輸入が滞っている。さらに、Myanmar Transportation Assosiation(日本では、全日本トラック協会に当たる組織)が協会企業に対し、市民の抗議活動であるCDMを支持する声明を出したことで、多くの運送会社が業務を停止し、国内輸送にも支障が出ている。CDMの影響は他の業種にも波及し、多くのガソリンスタンドが閉鎖され、公共交通機関のバスの運行が大幅に減少した。

ガソリンスタンドの閉鎖で、バスの運行にも支障↓↓↓

 

 CDMに参加する市民には、強硬に職場放棄を促そうとする人もいる。具体的な例を上げると、通関手続きのため通関業者が税関のビルに入ろうとすると、CDMに参加している市民が、CDMに参加しない通関業者に対して抗議の意を示し、その人の写真を撮り、通関業者名をSNSに投稿するといった行為も行われている。

中央銀行に出勤する職員に、CDMへの参加を懇願する人々↓↓↓

  実際に企業を経営している私から見ると、CDMはかなり効果があると思う。銀行が閉鎖され、現金が手に入らないと、会社を運営することができない。通関が止まり、商品が輸入できないと、売るモノがなくなるので、経営を継続することができない。CDMによって、企業活動は八方塞がりの状態になってしまい、手の打ちようがない。しかしこのままでは、CDMは、国軍政府を苦しめるよりも先に、経済活動が機能不全に陥り、市民の方が苦しめられるだろう。

 経営セミナーなどで、経営資源について説明する時、企業にとって重要な資源は、「ヒト・モノ・カネ・情報」ということをよく聞く。CDMは、多くの市民の賛同を得て、通関を止めてモノの流れを止め、銀行を閉鎖してカネの流れをとめたので、ヒト・モノ・カネの3つを国軍政府から奪ったことになるので、政府を揺さぶるという意味においては、有効な活動だ。

 一方の国軍政府は、インターネットを遮断するなど、市民から情報を遮断している。このまま国軍政府が事態を静観するようなことはあり得ないので、国軍政府が今後どのような反撃に出てくるのか心配だ。アウンサン・スーチー女史が拘束されてから10日以上が経つが、解決の糸口が見えず、いったい国軍政府は、どのような着地点を想定しているのだろうか、予断を許さない状況が続く。