ミャンマー駐在体験談

ミャンマー政変後の状況を一人の日本人駐在員の視点で書くブログ

CDMの企業活動への影響

 前回のブログに記載したように、日系企業の工場が多くあるティラワ経済特区前でも、2月17日から連日、デモ隊がゲート前に集結するようになった。経済特区の管理事務所は、労働者の安全を考慮し、デモ隊の経済特区内への侵入を防ぐ目的で、18日朝、全てのゲートを封鎖した。そのため、特区内の工場の多くが操業をストップした。デモ隊は、経済特区内にある税関の機能を止めることを目的としているようだが、私企業の工場も操業を止めざるを得ない状況に陥った。 

ティラワ経済特区前の様子↓↓↓

 CDMは、病院関係者の職場ボイコットから始まったが、銀行、政府機関へと広がりを見せ、経済活動に多大な影響を与えている。CDMは市民運動なので、この運動の戦略を立てたリーダーの存在はわからないが、意図的に銀行と税関を止めて、ミャンマーに経済的打撃を与えたのだとしたら、CDMの戦略は的を得ている。ヤンゴンには、ヤンゴン税関とティラワ税関の2つの税関がある。ヤンゴン税関前にはバリケードが設置され、中に入ることができない状態となっていて、通関業務は行えなくなった。ティラワ税関は、上記の通り、ティラワ経済特区のゲート前でデモ行進することで、ティラワ税関を機能不全に陥らせた。このような税関の機能停止により、輸出入通関ができず、ヤンゴンでは貿易が一切できない状態になった。

 銀行の機能停止は、さらに企業活動へ多大な影響を与えている。銀行が機能しなければ、給与支払い、仕入れ、国内・国外送金、外貨両替ができず、企業活動が全く進まない。借金をしようにも、金融機関が閉じているため、借金もできず、企業は手持ちの現金以外に、何もすることができない状態だ。当然、2月末の給与支払いができないという企業が現れている。

 このような状況下で、シンガポール外相が、「一般市民に経済的な影響が出てくる広範囲の経済制裁は望まない」と発言したことから、CDMを進める市民グループからタイガービール等シンガポール製品を対象としたボイコットシンガポール運動が広がっている。こういう発言は絶対にしてはならないと肝に銘じた。

シンガポール製品のボイコット運動↓↓↓

 また、僧侶もデモ行進に参加している。ミャンマーは国民の9割が仏教徒と言われており、僧侶がアウンサン・スーチー女史の解放を訴え、軍事政権を批判していることは、国民への影響も大きい。

デモ行進する僧侶↓↓↓

  このような市民の動きに対して、国軍政府は対抗策を何も示せていない。おそらく国軍政府は、ここまで軍事政権に対する反対運動が大きくなると想定していなかったのだろう。国民からの抗議だけでなく、クーデターに対する国際批判は高く、アメリカ政府は、軍のトップを含む幹部や、軍と関係が深い企業への制裁を発表した。アメリカのこの制裁だけなら、国軍政府のダメージはそれほど大きくなかっただろう。それよりも、CDMが実行している、銀行・税関機能の停止は、経済活動をマヒさせるので、国軍政府へのダメージが大きい。経済活動が止まることは、市民生活も苦しくなるので、国民へのダメージも大きい。CDMは、アメリカなどの国際社会が科した制裁よりも厳しい経済制裁を、ミャンマー国民自らがミャンマー政府に対して科しているようなものだ。ミャンマー国民と国軍政府の、どちらが、いつまで、この状況を耐えられるかの、我慢比べのような状態になりつつある。

 

NHKクローズアップ現代で、抗議デモについて放映されました。↓↓↓

www.nhk.or.jp