ミャンマー駐在体験談

ミャンマー政変後の状況を一人の日本人駐在員の視点で書くブログ

2021年3月27日 国軍記念日

3月27日は、国軍記念日で軍事パレードが行われた。この日に向けて、ミャンマーの治安部隊は、市民の抗議デモに最大限の警戒をしていた。前日の26日には、国営テレビを通じて、恐ろしい警告を発していた。その内容は、「外で抗議デモをするなら容赦なく背中や頭に撃つ」というものだ。

国営テレビによる警告↓↓↓

国軍記念日の3月27日には、少なくとも114人が治安部隊の発砲によって死亡した。国軍記念日に、国軍は自国民を無差別に殺す行為を繰り返した。死亡した者の中には、子供も含まれている。ミャンマーは、政府が組織する「治安部隊」が、殺人を繰り返すというとんでもない世界に変貌した。

3月27日に死亡した地域別の人数↓↓↓

下のツイッターにある、防犯カメラの映像は、国軍の異常な行為をまざまざと見せつけている。抗議活動など全くしていない、ただバイクに乗っていた一般市民に、躊躇なく発砲している。これでは、街を歩くだけで死亡するリスクがある。

また、27日午後に、アメリカ大使館の隣にあるアメリカンセンターという施設に向けて4発の発砲があった。犯人は特定できないが、国軍政府に対して制裁を科すアメリカの施設に向けて発砲するのだから、間違いなく、軍か警察の仕業だ。軍や警察が無法状態に置かれていると言わざるをえない。

アメリカンセンターへの発砲↓↓↓

国軍記念日に起こるであろう最悪の事態を想定したアメリカ政府は、ミャンマーに住むアメリカ市民に対して、ミャンマーの現状を丁寧に説明し、3月27日には家から一歩も出ないように、警戒を促すメッセージを、前日の26日にWEBサイトで発信していた。そのおかげか、アメリカンセンターの銃撃事件では、死傷者が発生せずに済んだ。さらに、アメリカ大使館は、アメリカ市民にミャンマーへの渡航中止と、ミャンマーからの国外退避の勧告を発し、危険情報を最高のレベル4としている。日本大使館の対応とは大違いだ。日本大使館が発している警戒レベルは、レベル2と2段階も下で、不要不急の渡航を止めるように通知しているに過ぎない。3月18日のフライトで、新たにミャンマーに着任した日本人駐在員もいるほどだ。3月20日に、ある1人の新任者から私に着任の挨拶のメールが届いたので驚いてしまった。日本政府の対応には、あきれてものも言えない。

アメリカ大使館が、米国市民に対して国外退避を促すメッセージ↓↓↓

国軍記念日を境に、ミャンマーはますます危険な状況になりそうだ。そうした危険な状況を作っている国軍政府のトップであるミン・アウン・フライン総司令官は、そんなこと全く意に介さないようなスピーチを国軍記念日に行った。スピーチで彼は、選挙の不当性を訴え、クーデターを正当化し、選挙後は権力を移譲すると主張した。 さらに、市民の抗議デモについては、「国家の安定と治安を脅かす可能性のあるテロ行為」は容認できないと警告し、「法が尊重されず、侵害されるなら、われわれが望む民主主義は無秩序なものになる」と述べた。明らかに国家の安定と治安を脅かしてテロ行為を行っているのは国軍や警察で、法を尊重せず、侵害し、民主主義を無秩序なものにしているのは、今の国軍政府だ。ミン・アウン・フライン総司令官は、どうやったら、そんな曲解ができるのだろうか。

それにしても、日本政府はだらしがない。このような状況になっても、自国民に対して国外退避勧告も出せないし、ミャンマー国軍政府に対する経済制裁もできない。特に、ミン・アウン・フライン総司令官の主張する選挙の不当性については、反論することがあるだろう。2020年11月に実施された総選挙で、日本財団笹川陽平は日本政府の選挙監視団の団長を務めた。その際、日本政府はこの選挙で二重投票防止のために特殊インクを供与するなど約1億8000万円の支援を実施した。さらに、選挙結果も「おおむね平穏」(外務省報道官談話)と認めていた。笹川氏は、選挙監視団の団長だったのだから、自ら監視した選挙で大規模な不正があったとする国軍に対して、論拠を質し、抗議するのが筋ではないのか。日本政府には、まだやれるべきことが多々あるのではないだろうか。