ミャンマー駐在体験談

ミャンマー政変後の状況を一人の日本人駐在員の視点で書くブログ

デモ拡大と政府の対応策

 週が明けて2月8日月曜日、市民によるデモ抗議活動は週末よりも激しさを増している。週末は会社や役所が休みなので、デモ抗議活動の参加者数が増えることは予想できていたが、月曜日に週末よりも規模が拡大したのは、職場での勤務を行わずデモに参加する人が増加しているからだ。デモ抗議活動の実態は、公道を数千人規模の人が声を上げながら練り歩いているのだが、車両通行の妨げにならないように、自らロープを張るなど、デモ抗議活動に参加する市民は周囲の人に配慮のある行動をとっている。

 その一方、デモ抗議活動の拡大は、ビジネスに大きな影響を与えている。税関職員の半分がデモに参加しているそうで、輸出入通関ができず、貿易が完全にストップしてしまった。銀行も、職員が出勤して来ないため、業務継続が難しく、主な地場銀行は閉鎖したまま。邦銀も状況は同じで、先週振込依頼をした案件が処理できないという連絡を受けた。理由は、ミャンマー人職員が欠勤しているために、手続きが完了できないということだった。いつまでも、銀行業務と輸出入通関が止まったら、自分の会社も売るものがなくなり、資金繰りも苦しくなるので、ヤキモキしている。

 この状況を受けて、国軍政府は2月8日夜に、以下2つの命令を発した。

  • 夜間外出禁止令(午後8時から午前4時の間の外出禁止)
  • 公共の場での5人以上の集会禁止令

 さらに、フェイスブック、インスタグラム、ツイッターなどのSNSの遮断も継続している。SNSの規制は、VPNを使用することで規制を免れることができるので、あまり意味がない。5人以上の集会禁止は、デモ行進をしたら、一発で法律違反になるが、市民はおそらくデモ行進をやめることはないだろう。問題なのは、夜間外出禁止令だ。工場の操業時間を短くせざるを得ない。先週まで7時~13時、13時~19時の2シフトで勤務していたが、19時に工場を出発したのでは20時に家に到着しないものもいる。したがって、操業時間を7時~17時に時間を短縮した。そうすると2シフトで稼働する必要がなく、1シフトにせざるを得ない。そこで、2シフトの人数を、1日交代で出勤させることにした。これでは稼働率が50%となり、生産性がガタ落ちで、収益など見込めたものではない。この状況を端的に言うと、人件費は以前と同じで、売上が以前の半分になるということだ。利益など出るわけがなく、損失額を算出するのが恐ろしい。夜間外出禁止令による損害はかなり痛い。

夜間外出禁止令を発令↓↓↓

 

 翌朝、2月9日朝7時過ぎ、スマホのメッセージ受信音が鳴った。人事マネージャーからだ。写真を見ると、橋が警察によって封鎖されている。メッセージには、「橋が封鎖されて、数名が出勤できない」と書かれていた。2月9日9時に大規模なデモ行進を行うという噂が流れていたので、郊外からヤンゴンダウンタウンに人が集まるのを阻止するために、橋を封鎖したようだった。ヤンゴンは、川に囲まれた都市なので、橋を封鎖すると、郊外から人が往来できなくなる。政府はデモ抗議活動を抑えるために、橋の封鎖に踏み切ったようだ。2月9日夕刻には、封鎖は解除され、往来ができるようになった。いつまで、この状況が続くのだろう。ビジネスの継続を考えても仕方がないのかも。業務は成り行きに任せて、身の安全だけを考えた方が良いのかもしれない。

警察による橋の封鎖↓↓↓