ミャンマー駐在体験談

ミャンマー政変後の状況を一人の日本人駐在員の視点で書くブログ

サイレント ストライキ

クーデター発生後のミャンマーでは、軍や警察などの治安部隊のことを、テロリストと呼んでいる。特に最近の治安部隊は、市民に対して残虐な虐待行為を繰り返し、治安部隊自らがミャンマーの治安を乱し、テロリストと呼ぶに値する行動をしている。当初は、デモ参加者に放水やゴム弾の発砲で取り締まる行為だったが、すぐにゴム弾が実弾に変わった。武器を持たない平和的なデモに対して実弾を発砲するので、とても許されるものではない。さらに最近はますますエスカレートしている。特に3月23日にツイッターで流れた7歳の女児が射殺された事案は、テロリストを通り越して、鬼畜の所業だ。この女児は、マンダレーの自宅にいたところ、治安部隊の銃撃が始まり、流れ弾に当たって出血多量で亡くなったということだ。家にいても殺されるなんて、ミャンマーに安全なところは無くなってしまった。マンダレーでは、私の会社の取引先従業員も、帰宅途中に銃で頭を撃たれて亡くなった。昨日は当社の従業員が喫茶店にいたところ、喫茶店にいた客全員が逮捕されるという事態に巻き込まれ、当局に拘束されてしまった。マンダレーでは普通の生活すらできない状況で、マンダレーの治安部隊は、かなり異常な集団だ。

7歳児童射殺事件(センシティブな写真を含む)↓↓↓

Julia Pan Phoo on Twitter: "Terrorist military killed 7 years old kid named Ma Khin Myo Chit in Aung Pin Lal, Mandalay, in the evening of 23rd March.
#WhatsHappeningInMyanmar
#Mar23Coup
#WeNeedR2PInMyanmar… https://t.co/WQ1YbWrwiy"

3月22日には、マンダレーでは14歳と15歳の少年が、治安部隊の銃撃で命を落とすという事案もあった。またヤンゴンでは、治安部隊が店の商品棚を壊し、商品を盗み、最後に防犯カメラを壊そうとする行為を防犯カメラが捉えていた。さらに、市民が撮影した同じヤンゴン市内の映像では、治安部隊が配備したブルドーザーが市民の車を次々と押しつぶす様子が映っている。

14歳の少年のお葬式↓↓↓

治安部隊が店舗で盗みを働く様子↓↓↓

ブルドーザーで車をつぶす様子↓↓↓

 治安部隊が一般市民の屋台を破壊した↓↓↓

このように、ミャンマーの治安部隊は、もはや強盗殺人及び器物損壊罪で逮捕されるべき犯罪人集団だ。国民からテロリストと呼ばれるのも致し方ない。治安部隊の無差別な暴力により、2月1日のクーデター発生後、実に300人もの市民が犠牲になっている。

死者数の推移↓↓↓

こうした治安部隊によるデモに参加していない一般市民への暴力は、全ての国民を心理的に追い詰めて、抗議活動を停止させることが目的だと思われる。結果として、恐怖心から抗議活動に参加する人の数は減少傾向にあり、いったん抗議活動を停止する地域も出ている。私の住むヤンゴンの市街地では、明らかに路上でのデモが無くなった。しかし、人の心は暴力では変えられない。デモ活動はせずとも、軍事政権に対する抗議の意思に変わりはなく、デモ活動をする代わりに、ろうそくを灯したり、看板や果物などを抗議文などとともに置いた「無人デモ」も目立ち始めた。

看板などを置いた無人デモ↓↓↓

3月24日は、サイレント・ストライキ・デーと名付けられ、No Car, No People and No Shop, Only Stay Homeという、キャンペーンが実行されている。誰がリーダーというわけでもなく、サイレント・ストライキをやるという情報が、ツィッターフェイスブックで流れると、国民のほとんどが共感して、全てのお店、企業、工場が操業を止め、誰一人として、街を歩く人がいない状況になった。名前の通り、静かなストライキの実行だ。

街の様子↓↓↓

国民の軍事政権に対する反対の意思はとてつもなく強い。リーダーがおらず、誰が決めたわけでもない、サイレント・ストライキを、国民1人1人が、企業も一緒になって、ミャンマーにいる人々全員が、まるで1つの意思を共有するかのように、一斉に街から姿を消し、家に閉じこもった。普通考えられないことだ。想像してほしい。新型コロナが流行した時、日本ではどうだったか?政府がいくらステイ・ホームと呼びかけても、街に出かける人がいた。パチンコを止められない人は特に象徴的で、テレビのニュースで連日報道された。それなのにミャンマーでは、政府からの強制でなく、ツィッターフェイスブックで流れた情報に共感して、誰も街に繰り出さない。まさに国民が一枚岩になっているのを目の当たりにし、国民を応援する気持ちが一層強くなった。

クーデター発生からもうすぐ2か月になろうとしているが、全く出口が見えない。政府は弾圧を続け、国民は反発を強め、治安は悪化し、経済は回っていない。軍事政権が疲弊して政権奪還をあきらめるのか、国民が疲弊して軍事政権に妥協するのか、このどちらかしかないと思うのだが、この国の行方が全く見えてこない。